恋の施し
「駄目!離れて!」
私は渾身の力をこめて、郁を突き飛ばした。
「っつ…何すんだ?」
「郁の方こそ何してるの!?
郁には久谷さんがいるじゃんか!」
「はぁ!?何だそれ?
俺は重症でイタイぐらいにずっと響花一筋なんですけど?」
「え…?
どういう事…?
だって、久谷さんが…」
そうして久谷さんに伝えられた事を郁に全て話した。
「はぁあ!?あの女、響花にそんなこと言ってたのか!?」
すると郁が絶叫した。
「あらあら。じゃあ、やっぱり2人は手のひらで踊らされてたってわけね」
雪音が郁と同じ茂みの場所から出てきた。
「あの…クソ女…
ってか、雪音。分かってたんなら言ってくれよ!」
「そういう事は自分たちで解決しないとまた同じ壁にぶつかった時対処できないでしょ?」
さすがは雪音。
尤もな見解だ。
「くそっ!俺らの勘違いかよ!
まるで道化じゃねーか!
響花と俺の時間を返せっ!」
高みの見物をしたという雪音に対し、郁はかなりご乱心のご様子。
私はそんな対極的な2人の様子をただ眺めていた。