恋の施し
こんな華々とした人は、きっと女を弄んで嘲ているんだと思ってた。
「…そんなんだから、誰とも会話出来ねーんだぞ」
だけど、口調はキツくてもコレは彼の本音で飾った言葉ではないと分かる。
私に優しくして取り入って適当にお付き合いする人じゃないと分かる。
「ねぇ、名前なんて言うの?」
「あ?
何だよ、突然…」
「良いから教えて」
「神崎郁」
「そっか。郁、か」
「うぜぇ…
馴れ馴れしくいきなり名前呼ぶんじゃねー」
げんなりする彼も私にとっては素敵に輝いて見えた。
それは本当にまるで“運命”だったのだ。
――それなのに、暫くして郁が望月響花という女の子に気がある事を知った。
そして私の嘘でまんまと騙されたけれど、また寄りを戻したと知った。
現在は、郁から相変わらずの無視の日々。
そんな事なら、あの時私に声なんて掛けてこないで欲しかった。
でも。
「いーく!」
「……………」
やっぱり、私の運命の人だと感じてしまったから、まだまだ私は諦めない。
いつかは彼があの日のように私の元へ来る事を信じて―――
―終―