恋の施し


「私のどこが鈍感なの?」




「っ!
…………言いたくない」




「はい!?何それ!?
そこまで人を馬鹿にして言わないまま終わるなんて卑怯じゃない!」




「………」




それでも郁は黙ったまま。




「……分かった。もう聞かない。どーせ私は郁のこと何も分かれない駄目で鈍感な彼女ですよー…」




―――なんか自分で言ってて悲しくなってきた。


やっぱり彼女になった今でも私は、郁の気持ちが分からないままなんだ。





「私、トイレ行ってくる」





今は1人になりたい気分だった。



いつも郁は私の変化や思いに気付いてくれるのに。


どうして私はいつも気付けないんだろう―――?





コレは、いつも思っていた事だ。



雪音や郁の間で通じる会話がある。

だけど私はそれを理解できない。




ずっと、一緒に居るのにどうして私だけこんなに情けなくて酷い奴なんだろう―――?



世間では、長年連れ添った人は相手が次に何をしてほしいか分かると言う。


だけど私には未だに分かっていない。



相手の考えを読み取るにはあと何年必要なんだろう?
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