恋の施し


「待てよ。響花」




郁は立ち上がった私の腕を握って引き止めるのではなく、後ろから抱きついてきた。
丁度彼の頭が私の腰の位置にある、そんな態勢だ。


こういうところ……郁らしい。




「離して。今はそんな気分じゃない」




「俺が好きなタイプは“髪が短くて笑顔が素敵な人”」




「さっきそれ聞いた」





私の言葉に、さっきとはセリフを変えてもう一度郁が言った。
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