恋の施し


「何、でしょうか?」




私の纏う空気の違いに気づいたのか、郁は素に戻った。




「あのさ、私、あれがファーストキスなんだけどどうしてくれるの!?」




「…知ってる。
俺は嬉しいけどな」




「っ!馬鹿にしないで!
郁はいっぱい経験あるし、そんなの平気かもしれない。

…っだけどっ
私は……キスは、好きになった人としたかった…」




私は楓に憧れてる。
笑った笑顔もたまに困ったときに頬をかく仕草も1つ1つにドキドキする。

別に恋が叶うとか思ってないけど、でも。
キスは…そんななんとなくとかそんな軽い気持ちで遊び感覚ではしたくなかったんだ。


今まで恋なんて…って思ってたから、なかなか自分の気持ちに気づけなくて戸惑った。


だけど、先日やっと自覚して、雪音に話すことができた。


…おこがましい考えかもしれないけど、私はきちんと想いが通じ合った人としたかった。


お互い好きでもない者同士が軽はずみにするなんて……そんなの嫌だ。
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