恋の施し
「…最近、特にその顔見るよ。
前は会う頻度が少なかったせいもあるかもしれないけど、週1回くらいだったのに…
私が相談をしたときくらいから、1日に何回もその顔してる」
そう、今までは悲しい顔はそんなに見かけなかった。
だけど、最近郁とよく話す分、嫌でも自覚してしまった。
いくら鈍感な私でも気づく。それ程郁は何とも言えない悲しい表情を浮かべるのだ。
「………」
「……やっぱり迷惑だよね?
いくら好きでも…特別でもそれにつけこんで、郁の優しさに甘えたら、嫌だよね?」
郁は昔から優しかった。私が雪音よりも頼りないから、私にはよく親切にしてくれた。
私が小学校の先生に叱られて落ち込んでた時は黙ってそばに何時間もいてくれたし、道に迷って家に帰れなくなった時は郁が真っ先に私を見つけて手を握って温かい家まで連れて行ってくれた。
中学生の時ぐらいから女遊びが激しかったけど、郁はいつもどこか悲しそうで…
それでも郁の優しさは変わらなかった。
今だって、私の相談を、話を聞いてくれてる。