恋の施し
「じゃあ、もうちょっとこのままでいよ」
「…郁、そろそろ離して?」
苦しいし。
酸欠だ。
「嫌。
相談にのってるんだから、これぐらい良いだろ?」
「…他の女の子じゃなくて?」
郁ならこんな事、数えきれないほどやってきて、数えきれないほど待ち望まれているだろうのに。
そう、考えたら少し胸にかすかな違和感を感じた。なんだか上手く言えないけれど、モヤモヤする。
「響花が良い」
短い台詞。ポツリと何気なく発せられた言葉に私は嬉しく思ってしまう。
郁に対してこんな気持ち抱くのなんて初めてだ。…なんか私嫌な奴になってるよなぁ…
「……うん」
だけど、私の身体は勝手に郁を抱きしめ返していた。
一体、私ってばどうしちゃったの!?