恋の施し


「大丈夫じゃねーよ」




そう安堵したのも束の間。

いきなりドアの近くから私と郁以外の声が聞こえた。



えっ!?誰かいたの!?


私は慌てて郁から離れ、声の方へ顔を向ける。
そこには郁とよく一緒に居る男子が居た。名前は知らないけど、顔はよく知っている。

少し彫りの深い顔をしていてとても整った顔立ちをしている。
目じりにホクロがあるのがとても印象的だ。




「……邪魔するなよ、浩平」




浩平と呼ばれたその人が私たちに近づいてきた。




「いやー…告白したと思って見てたけど、全然相手にされてねぇし。抱き合っちゃうし」




浩平君はペラペラと語り出す。

結構見た目とは反対におしゃべりな人のようだ。




「出てけ。そしてもう一度言うが、俺の邪魔をするな」




「俺、これをここに持って行くよう先生に頼まれたんだよ。だから無理」




ピラピラと郁の前でプリントを左右に振る浩平君。




「置いたらさっさと帰れ」




「薄情な奴め…」




私は2人の会話に全くついていけなず、ずっと黙ったまま2人の様子をボーっと眺めていた。


そんな視線に気づいてか浩平君が私に声をかけてきてくれた。




「あ、俺、郁のクラスメートでお友達だ。宜しく」



ニカッと笑う浩平君。


…郁でイケメンは見慣れてるつもりだったけど…カッコ良いかも…
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