恋の施し


あっという間に土曜日がやってきた。


郁と2人でどこかへ行くなんてことはなかったから、何か緊張する。


いつも雪音がいたからなー


郁を待ちながらそんなことを考えていると




「「「キャア―――ッ」」」




大気を震わせるような悲鳴に近い女性たちの黄色い歓声が響いた。


ま、まさか…




「あ、響花!やっと見つけた!
ずっと探してたんだ」



人が多くてさ…って郁は言うけど、そりゃあ、そんな格好してたら周りに人も集まって来るよ。


郁自身は何気ないファッションなんだろうけど、今日の郁は普段の制服姿より何倍もカッコ良かった。


郁を見慣れている私でさえドキドキしてしまう程だ。




「響花?
どうしたんだ?ボーッとして。…もしかして見惚れてくれた?」




はっ……ダメだダメだ。何考えてるんだ。
だから郁に対してのドキドキはそういう意味じゃないんだってば。いい加減分かろうよ自分。

きっと雪音が居なくて調子がおかしいだけなんだから。
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