恋の施し
どんな時でも女子、女子、女子。
しかもよく見るとたまに他学年の先輩とか混じってるし。
私は雪音みたいにその間を堂々と横切ったり、声をかけたりする程肝は据わっていないんだ。
小学校や中学校でもそうだったけど、郁はモテ度合は半端じゃない。
雪音は慣れよ、慣れとか言うけど慣れれるわけがない。
道行くすれ違う女性達は皆振り返るほど。
言わずもがな高校でも当然モテてる。だけどそれは、中学時代とかの比じゃない。
なんか、現代のこのご時世にファンクラブまで出来てるって噂もあるし…
だから余計に近づけない感じなのだ。
少しでも雪音を見習って、私も堂々と出来れば軽く話せるのだろうけど。私の場合、どうしても彼女達の圧力に負けてしまう。
だけど、せっかく雪音が(望んではなかったけど)ここまでお膳立てしてくれた。
それによくよく考えてみたら、別に郁だし。そんな恥ずかしがる事でもない気がしてきた。どうせ雪音に話したんだから、いつかは郁の耳に入るのだ。
だったら、この際思い切って相談してみるのも良いかもしれない。
「あのね、郁。
聞いてほしいことがあって、ここじゃあ…ってん?
郁?どうしたの?」
場所を変えようと言おうとしたら、郁の様子がおかしいことに気が付いた。
何か郁の耳とか頬が赤い。