恋の施し


郁はスルリと自分の手を私の手に絡ませてきた。



こ、これが“恋人繋ぎ”…


うわ…皆見てる…
恥ずかしい…。


私は思わず視線を下に泳がせる。




「あ、あのさ、郁はどこに向かってるの?」




とりあえず何か話していないと耐えられない。




「遊園地。カップルたちの定番スポットだ」




そんな余裕のない私とは正反対に郁は普通に返事をくれる。…コレが経験値の差ってやつか…


それにしても、遊園地って定番なのか…小さい子供たちがほとんどだと思ってた。









そして漸く、すれ違う人々の視線を気にしながらも、私たちは遊園地に到着した。


あーここも人が多いから、郁が目立ってコレ以上の視線を感じる事になるんだろうなぁ…


そう考えると少し気が重くなった。


だって視線を感じると嫌でも自分の繋がれている手を意識してしまうから。

昔は手なんて誰と繋いでも普通だったのになぁ…

何で人は変わってしまうのだろう?
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