恋の施し
「――――え?」
一瞬、時が止まった気がした。
“あの時”ってもしかして…
「ねぇ、もしかして郁は…「早くもう1回乗るぞ。じゃないと置いてくからな」
もしかしたら、私の聞き間違いだったのかもしれない…
少し呟いた感じの声だったし、周りの音もうるさいし…
それに“あのこと”は郁は知らないはずだ。……きっと私の考えすぎだよね…
「あ、乗るから待って!先に行かないでよ!」
私は郁の後を慌てて追いかける。
そう、昔私には1つのトラウマがあった。