恋の施し


今思えば、郁はこの時から少し様子が変わった。

彼は何かを考え込んでいる様子でどこを見つめるでもなく静かに教室で椅子に座っていた。

郁の様子が少しおかしいからか、いつも郁を取り巻いている女子の姿は見かけなかった。ただ遠くから郁の様子をうかがっているだけだ。


そして一瞬合った私の目から明らか様に視線を逸らして、彼は答える。



「女と遊んでた」




「…そっか」




そしてこの頃からだ。郁が女遊びに走ったのは。


でもそれ以外は私のよく知る優しい郁で…


時折悲しそうな顔をするようにもなていたけど。話し方とかは以前と変わりのないままだったから、私は気付いていないふりをする事にした。


大切な事なら…時期が来れば、郁から話してくれるだろうと思ったから。






そうして郁や雪音のおかげで高校に入学するまでには、男子と話せるようにまで回復していた。

それまでは極度に――それこそ不審者扱いされる程――男子を避けていた。



でも、今は違う。



私は恋もできるようになったんだ。





私は雪音たちのおかげで立ち直れたんだ…


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