ボーダーライン
紀ちゃんと先生との会話が心にグサリと突き刺さる。
「俺、実は高校の教師になって野球教えたいんだよなあ〜。」
「多分貯金一千万ぐらいいったら結婚するかも。」
「お笑い芸人憧れるわ〜。」
「あのドラマ、結構おもしろいよな!」
全部、私の知らない先生。
全部、いま初めて知った。
先生を知ることは、嬉しいはずなのに…切ない。
まなたちよりも、先にそれを知りたかったと思う。
独占欲のカタマリ…。
私はいま、笑えてる?
心の底から…幸せだと。
笑えるはずがない。
いま私と話している先生は、先生じゃない…。
いま私の目の前にいる貴方は、教師じゃなくて、結城弘史という男性。
私の知らない人。