ボーダーライン


掃除が終わって教室を出ようと、先生が近づいてきた。


思わず後ずさりをして、廊下の壁にもたれかかった。


何となく怖い。



恋に臆病になってしまった私には、先生に近寄ることさえ怖いよ…。



先生のことが好きだと自覚して、先生と話す機会は今日が最初で最後なのに。




近づくことさえも恐れて、何も言うことも出来ない…。


言いたいことが
何も言えない……。




しっかりしてよ…私




廊下に出てきた先生は、私とあまり目を合わせてくれない。


しばらく沈黙が続いて、先生は私の方を見た。







「転勤になっちゃったな…」


「…うん…そうだね…」


「転勤した方が良かったのかもしれない。合わない先生の方が多かったんだ…。」







あまり聞きたくなかった。



でも本当は、先生の
本心が聞けて嬉しかった。


先生も…
大変だったんだね。


先生の苦労を
私は何も知らなかった。







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