ボーダーライン





「先生…あの人、彼女できたってさ…!」




先生と仲良くなってから、
陸上の練習中や練習が終わった後には、先生と話がしたくなる。




2階の廊下の窓から、
顔を出す先生を見上げながら笑って言った。





すると先生の表情が突然変わった。


寂しそうな…優しい笑顔。



「やっぱり…俺がいろいろ言っても、ずっと好きだった気持ちは変わんねえよな…忘れるのに時間はかかって普通だと思う…。これから、何か目標を見つけて頑張れよ…!」





意外…




こんな言葉をかけてくれるなんて思ってなかった。



先生ってこんなに優しい人だったの?


今まで見たことのない、優しい笑顔。



初めて心に染みた先生の言葉。




どこかに置き去りにされた私を、大きな手でそっと救い出してくれる。


先生が…そんな人に思えた。





「もう…今は恋愛とかしたいとは思わないし…いつか敬太先輩のこと諦めがつく日が来ると思う…私頑張るよ!」



口だけじゃないよ。


…私、いつか
本当に敬太先輩のこと忘れられそうな気がするよ…。


時間…かかるかもしれないけど、先生は見守っててね。


どこにも行かないでね…。








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