ボーダーライン






先生は大きな目を上下に動かしながらざっと結果を見た。




苦手な理科は17点…。


正直これはかなりヘコんだ。



「おい…これ、クルなあ。」



私の点数を見て、くくくって先生が笑う。



「ひどいよ先生〜!理科苦手だもん!」



なんて言いながらも
私の顔は笑ってる。


いま、本当に幸せ。


時間…止まればいいのに…。





「でもやっぱ…理科クルなあ…」


「ひど〜い!」



先生のツボだったみたい。


先生がそうやって笑ってくれるのなら、悪い点数も平気で取れそうな気がした。


もちろんダメだけど…




先生に入試のアドバイスをしてもらったり、参考書をくれたりした。


「他の生徒には内緒な。」


と言って。


嬉しすぎて、体中が幸せだと感じた。






今日は
中野が戻ってくる

あの話はしなかった。



先生の隣でずっと
笑っていたかったから。



『今』を存分に体で感じたかった。




先生…私ね、先生が好きすぎてどうにかなっちゃいそうだよ。







< 63 / 308 >

この作品をシェア

pagetop