ボーダーライン





階段を上りきって、
右へ振り向くと…










先生…



先生だ。





寂しいほどに誰もいない。


この廊下は、いま、

私と先生しかいなかった。




気付いてもいいくらいなのに、先生はまだじっとグラウンドを見つめている。




先生はいま、何を考えてる?




先生のもとへ
ゆっくりと歩いていく。











「先生…」



「おうっ…」





ニコッと笑う
その笑顔が、本当に大好き。



まるでこの世に先生と私しかいないみたいに、周りは静かだった。



そのおかげで、寒い風の音までもが鮮明に聞こえる。



先生と出会って、四度目の季節。



最初で最後の…冬





「通知票…持ってきたよ!」


「どれどれ………」



その頼もしい笑顔は、そうやっていつも私の心を癒してくれた。



「杉本は5教科があんま伸びねえよなあ…まあ南野は合格圏内だから大丈夫か…!冬休みは過去問しっかりやるんだぞ!」



「うん」








先生が開けていた窓から入る冷たい風が、私のほっぺたを急激に冷やす。








「ねえ先生…2学期で終わりなんだよね…?」
















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