ボーダーライン





「咲良が呼んでるよ♪」



まなが職員室にいる先生と言葉を交わしている。



私には職員室にいる先生が見えないのが、よりいっそうドキドキさせる…。


すぐ近くにいるんだ…





職員室のドアからひょこっと顔を出す先生。



私がいることを確認して、ニコッと笑って出てきた。



「おう、どした?」


どした?って分かってるくせに。



恥ずかしがってる場合じゃない。


勢いが大事なんだ!




「これ……あげる!!」



小さな紙袋を差し出した。



「お…!ありがとな!あ、試験の結果教えろよ〜!」


その笑顔が大好き。

好き好き好き、大好き!!



「うん、じゃあね!!」




たったこれだけのことなのに、私にとっては物凄く大きなことなんだ。



先生だからお返しだってもらえないけど、それでも良い。



渡せただけで満足。




交わした言葉が少なくても、いまは平気だ。





この日は、先生の笑顔をずっと思い返していた。



その度にドキドキして、胸が苦しくなって…



夜、眠るまでずっとドキドキが止まらなかった。









< 93 / 308 >

この作品をシェア

pagetop