男の娘だって狼です【ONLOOKER番外】
里吉の話では、小さい頃から、外では男であることを偽って生活していたらしい。
もともとこんな顔立ちだからこそ思い付いたことなのだが、それが思いの外都合が良かった。
だから最近まで、公の場ではきちんと男として、普段はできるだけ女性に近い格好を、という生活を続けていた。
だからその癖で未だに言葉も抜けないし、服装も男らしいものは似合わないので、どうしても中性的なものを選んでしまうらしい。
その辺りまでは鳴海にも理解はできた。だが、
「そもそもなんで性別詐称してたんですか?」
「家庭の事情よ」
「うわ、聞きづらっ」
「聞くな、って言ってんの」
腑に落ちない、というような表情を見せた鳴海だが、そこは持ち前の大雑把さで気にしないことにする。
そもそも、里吉が常軌を逸した特殊さだったから、そこに食い付いただけの話だ。
日本人の友達を作ることにも久しぶりの日本語の会話を楽しむことにも、鳴海にとって里吉の事情なんて少しも関係はなかった。