男の娘だって狼です【ONLOOKER番外】
「里さん、どうしてB棟じゃなくてここなんですか?」
鳴海がそう訪ねると、項垂れていた里吉の肩がぴくりと揺れた。
それから少しの沈黙が降りる。
「……男子寮、居心地悪いとか」
「そりゃ悪いでしょうよ、こんだけ女顔だったらどーしても浮くわ」
「いじめられたんですか?」
「そんなんでわざわざ引っ越さないっつーの」
「えぇー? あ、襲われそうになったとか?」
今度は、固い沈黙だった。
「えぇぇえぇうっそぉ!?」
「嘘でそんなこと言ってどーすんの!?」
「まじで!? え、まじで!?」
「その反応すげー腹立つ!」
鳴海にしてみれば、軽い冗談のつもりだったのだ。
自分でも知らないうちに、こんな爆弾を放り込んでしまうとは。
目を吊り上げて怒っても相変わらず美人な里吉に、鳴海は開けっぱなしの口を閉じた。
「えぁ……すごい説得力」
「は?」
「里さん超美人っすもんねぇ」
「嬉しくない」
「えぇー、誉めてるのに」