男の娘だって狼です【ONLOOKER番外】
唇を尖らせて眉をしかめる、なんて、誰もがやるはずの不機嫌な表情。
それすらも里吉がやれば気品に満ち、氷のような痛いほどの美しさで、見る人の心に攻撃をしかけるのだ。
そんなくさい比喩表現もぴったりと当てはまるような、つまるところ、里吉から目が離せなくなった鳴海は今、
(やっばい……なんか、どきどきする)
ときめいてしまっていた。
普通の仕草が、里吉がすれば普通じゃなくなる。
青年にしては少し高くて柔らかい声さえもが、一種の凶器だ。
急に黙り込んでしまった鳴海を見やる、流し目に至っては。
「……なにしてんの」
「え、いや、あのぉ……なんかビームとかくらいそうで、ははは」
「あぁ、バカなの?」
鳴海は、受け流すことすらできなかった。
目許を固くガードしていた腕を外して、呆れた顔をする里吉を見る。
よし、もう平気だ、と一人で安心して、やっと再び口を開いた。