男の娘だって狼です【ONLOOKER番外】
噂のさときちくん
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「え? 日本人がいるんですか、他にも」
出会ったばかりのクラスメイトから聞いた話に、黒木鳴海は目を輝かせた。
彼女の目の前で、カレンが快活に笑う。
赤毛にそばかすが可愛らしい、絵本のキャラクターのような少女だ。
「そう、シズミ・サトキチっていうの」
「サト……? それはまた、古風な」
覚束ない英語でそんな意味のことを返す。
きちんと通じたようで、カレンは「そうなの?」と答えた。
日本の至って普通の高校生レベルからたった二週間でよくここまで成長できたものだと思うが、同じ環境に置かれている13歳の弟は、もっと上達が早い。
やはりこの年にもなって語学をほとんど一から身に付けるなんて難しいんだ、と、自分に言い訳してみた。