男の娘だって狼です【ONLOOKER番外】
「鳴海」
「はい?」
「できれば家には戻りたくないんだよね」
「まぁ、そうですね。引っ越しも面倒だし、お金もかかるし」
「二人か。二人……」
「里さん?」
「身の安全は確保できるか……」
「え、み?」
なんの話ですかぁ、と声を上げる鳴海に、里吉は俯かせていた頭をあげた。
その顔には、あまりにも爽やかな笑み。
「知ってた? 最上階って意外と危険だって」
「え? なんすか急に」
「上に逃げ場がないでしょ。いくらなんでも洒落にならないから、ここだけ鍵を電子ロックに変えるって話も出てたんだけど」
「……、……え!? まさかここでも襲われたんですか」
鳴海は混乱する頭で、(性犯罪者ホイホイ……)なんて意味のわからないことを思った。
「被害者って主に一人暮らしの人なんだよね。つまり二人ならぐっと安全になるってこと。鳴海がいれば変態野郎も、私がいない隙に入って来たりしないじゃない?」
「え、ちょっと待って」
「鳴海は寮に住みたい、私は安全に暮らしたい。利害は一致するわけよ」
「里さぁぁぁん!?」
なに考えちゃってるんですかお気を確かにぃぃぃ、と叫ぶ鳴海。
そんな彼女に、里吉は無情にも言い放った。
非常に見目麗しい、いい笑顔で。
「これからよろしく、鳴海」