男の娘だって狼です【ONLOOKER番外】
思いきり咳き込んだ里吉の背中を、鳴海は慌ててさする。
アイスティーを吹き出す、なんてみっともない真似はかろうじて避けられたが、噎せて真っ赤になった顔で、里吉は怒鳴った。
「……、何言ってんの!?」
「え、や、だって……せめて私が気付かないようにしてほしいなって……」
「なにその理屈。器のでかい嫁みたい」
「あ、なんか今の会話、日本人っぽくないですか?」
「どのへんが?」
里吉は溜め息を吐いた。
今なら、海より深い溜め息を吐ける自信がある。
私がつっこみ疲れとかありえない。
そう思うと、自分が日本にいる間に恐らくものすごく疲れさせてしまった気がする金髪の彼に、申し訳なく思えてきた。
なんだかんだで育ちが良くある意味で素直なためにそう考え至ったのだが、例の彼の日常を考えれば、あの程度でへこたれるわけがないということは、里吉は知らない。