霧の獣
唖然とし声の出せない俺に対して
正面に居た生き物が話しかけてきた。
『我が名は聖者の長、バトと言います。
あなたは友達をお捜しだと炎雅【えんが】様から
お話の方を伺っております。』
その声は俺が夢人の部屋で聞いた声に似ていた。
「聖者!?親父はそんなの居ないと言っていた!
第一、夢人がいなくなったのは
きっとあんた達のせいなんだろう!?」
俺はかみつきそうな勢いで聖者に言った。
『それでは、あなたを夢人さんに会わせれば、疑いませんか?』
聖者は言った。
今までの話しから推測すると、この人達が聖者であることを
理解せざるをえなかった。
黙っている俺にバトさんとは別の聖者がやってきて、
俺の横でノートらしきものを開いた。
真っ正面にも違う聖者が立って、
俺の頭部に手を翳した。
すると、不思議なことに本が勝手に
パラパラとめくれていったのだった。
そして、本はぴたりとあるページで止まった。
聖者は俺にそのページを見せて言った。
『この方で間違いないですね?』
そこには夢人の写真が載っていた。