霧の獣



しかし、人間はとても欲の深い生き物であった。
故に、人間は神の与えた幻獣の力を、
自らの欲を満たすためのみに
利用するようになっていったのだった。

その力を使い、
人間は他の生き物や
他の人間達と争うようになってしまったのだった。

やがて、人間のその力は
神さえも越える
恐ろしく強大な力に
なってしまったのだった。

争いは何時の日も止めどなく行われ、

木は皆死に急ぎ、

森はや焼け朽ちていったのであった。

神は生きた心地がしなかった。
まさに、生きながらの死だった。

私も直に滅びるのであろう。
と、神は確信した。

そして、神は自分の滅びるときに

ある特殊な力が生じるようにしたのだった。

やがて、神は滅び、地上からその姿を消した。


神が地上から姿を消した直後から霧は生まれた。

そう。




これが神の残した特殊な力。




霧に触れし幻獣は次々と
自我を失うかのように豹変していき


人間達を襲って喰らい、暴れ狂う野獣と化してしまったのであった。





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