霧の獣
やがて、どのぐらいたった頃だろうか・・・
1人のある狩人、未夜【みや】さんが話し始めた。
未夜さんは俺ら2人の兄的存在だった。
「俺たちは、いつものように森に入って狩りをしていたんだ。」
未夜さんは18才で俺らの2つ上、上品な顔立ちをしていて
俺の村では結構な有名人だった。
「でも、今日の森はいつもと違っていて霧がものすごく濃かったんだ。
そして、俺たちはお互いの顔すらはっきりしていなかったんだ・・・
急に霧が晴れたと思ったら仁蛙さんが倒れていたんだ。」
未夜さんの話を聞いて居ると後ろから声がした。
「未夜、実際の所お前は何も見ていなかったのだな。
きっと幻獣がでたに違いない。
すまぬが話しは全て聞かせてもらった。」
その声の主は長蛇さんだった。
長蛇さんの質問に対して未夜さんは
「はい。おそらくその可能性が高いかと思われます。」
と答えた。
その夜。
未だに夢人は親の死が受け入れられずに部屋こもっていた。
今の夢人は、昔俺の親父が死んだときの俺を鏡に映しているかのように
そっくりだった。
俺には夢人の気持ちが分かるような気がした。
俺は、夢人を慰めようと座っていた椅子から立ち上がり
ひとり静かに夢人の部屋へと向かったのだった。
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