カフェオレ
新しいコーヒーが注がれたカップがコト、と静かに置かれる。
意味を汲み取れて居ない私の様子を察して、五十嵐さんは言葉を続けた。
「妻のことは愛してましたよ。ただ、僕は“愛”なんて誰にでも向けられる感情だと思う訳です。」
そう言って五十嵐さんは、またコーヒーの香りをかいだ。いれたてのコーヒーの香りが余程好きらしい。
「誰にでも、ですか?」
「そう。妻以外でもね。親や、友達、マスターや貴女にだって愛を持って接する事はできます。」
私は、冷めたカフェオレの入ったカップを両手で包み込んだ。