ベニとでも名付けよう


さりげなく、慎重に。私は母の近くまでお湯を切りながら進み、口を開いた。


「お父さんってどんな人だったかな?もう忘れちゃったなぁ…」


「どうしたの?」


そう来たか。これはもう直球で。


「お父さん…なんで死んだの?」


本当はそんなに知りたくもない。


気になる。それが正しい表現。


しゃべってる途中に「やっぱりいいや」って言われると気になってしまう。


それくらいのもんなのが正直なところ。


だが、母は無言だった。


どれぐらいたったかな。10分、だいたい8分くらいたったころ、母はやっと口を開いた。


「私が殺したのよ。」
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