五人の王子に仕えしは




 柏崎君はおもむろに屈むと、私たちを繋いでいたたすきをほどいて地面に放る。


「馴れ合いとかそういうの、本当に嫌いだから」


 そう言い残すと、グラウンドを後にしてしまった。




 ……柏崎君。
 そんなの、あんまりだよ。



 一気に強くなり、ザアザアと降り頻る雨から僅かにいた生徒は逃げるように校舎へ入った。


「鈴奈ー! 雨やばいから中に……って、あれ? 鈴奈、蓮は……、」



 強く降る冷たい雨で、私の耳にその言葉は届かない。

 全身が雨に濡れて、涙も何も、分からなくなっていた。
 自分が泣いているのか、それさえも。





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