五人の王子に仕えしは




「お前は人から逃げ過ぎなんだっつの。鈴奈が頑張ってお前に関わって行こうとしてるんだから、逃げるなよ。お前も頑張ってそれに応えてやれよ」

 こんな事言う柄じゃないけど、俺も。


「…………」


 返事は無い、でも、俺の言葉で確かに蓮の瞳が揺れたのが分かった。

 暫く沈黙が続くが、やがて蓮が微かにフッと笑う。


「……まさか、お前がそんな事言うなんてな」

「は、似合わないとでも言うつもりか」

「ご名答」


 皮肉を込めた返事にまた何か言い返そうかと思ったが、やめた。


 蓮の纏っている空気が、穏やかだったからだ。





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