五人の王子に仕えしは
「悔しいよ、俺は……っ!」
強く吐き捨ててそういう奏君に、少し不安になった。
こんなに余裕の無い彼は、保健室の一件以来見た事がない。
「今までこんなことなったことなかったのに……っ、お前見てると、すげえイライラする……!」
その勢いで、手首を掴まれた私は、またしても壁にぐと押し付けられてしまった。近付く端正な顔とフェロモンのある香り、ヒヤリとした背中の感覚は、先ほどと同じ。
だけど、目の前の奏君はさっきとは全然違う。
「……俺さぁ、嫉妬したんだよ」
「…え?」
「お前がゴールした時。蓮に…抱き付いただろ。……馬鹿みたいだよな、マジで。最初は何とも思ってなかったのに、振り回されてる内にだんだん気になってて、挙句の果てには惚れてさ……そんで情けなく嫉妬して、ほんと、ほんと有り得ねえよ……ダサ過ぎ……」
「奏君……」
プライドの高い彼からしたら、こんな事、自分の中では有り得ない事象だったんだろう。私の手首を押さえつけたまま彼は俯いてしまっていた。
……て、ちょっと待って、惚れたって言った? 今?
「全部……全部お前のせいだ」
そう声を絞ると、奏君は私の唇に容赦なく噛み付いた。
「んっ……!! ふ、…っ」
突然訪れたそれは、私の思考を撹乱するには十分だった。
何度も何度も角度を変えて、それこそ本当に食べられてしまいそうな甘過ぎて、深過ぎるキス。
ぴちゃ、と時々鳴るのは、2人の唾液が混じり合う音。