五人の王子に仕えしは
人がいなくなって、俺は手を離した。
何やってんだ、俺、こいつ無理やり連れてきて、何話せば良いんだよ。
こんな状況でも、呑気な声は変わらない。
「えっと……奏君、どしたの?」
「……クソッ」
正直、言いたい事とか知ってもらいたい事はたくさんある。
けど、今それをこいつに言っていいのか。
俺は負けた。負けたんだ。
このバカに、気づいたら惚れてた。
「…悔しい」
こいつに惚れた事が。
目の前にはぽかんとした顔をした鈴奈。
いつも通りのアホ面。
だと思えば、ふと真剣な顔になる。
ほら、お前の、そういうとこ。