ナルシストの華麗なる恋愛講座
そして、私に隠していた片手を近づけた。
その手に握られていたのは
「薔薇?」
「そうなのだよ。そこの花屋で買ったんだ」
一輪の、赤い薔薇だった。
コンビニの横にある花屋で買ったらしい。
「なんでまた…」
「葉月、薔薇の花言葉を知ってるかい?」
そんなメルヘンチックなこと知るわけがない。
私は首を横に振る。
成瀬は少し微笑む。
「薔薇の花言葉は、【愛】や【恋】なのだよ」
「へぇ」
「そして、赤い薔薇の花言葉は【情熱】……【美しさの象徴】」
成瀬は私の手をそっと取り、薔薇を握らせた。
「この薔薇は美しい葉月に相応しいのだよ」
ミルクティー色の髪をした男は、私の手に、軽いキスをした。
思わず手を引く。
「はっ!?な、成瀬、アンタ今、ててて手に…!?」
「薔薇は背負うものではないのだろう?」
「ちょっと!人の話を…」
聞けよ!と言おうとしたら、あったかいモノで体が包まれた。
それは成瀬で、私は抱きしめられていると気付くのに数秒かかった。