ナルシストの華麗なる恋愛講座
館林先生は、私の席までツカツカと歩いて来て
むんずと成瀬の首根っこを掴んで引きずり始めた。
もちろん出口まで。
さすが、大人の男だね。頼りになる。
「ちょっと館林くん!僕は葉月と一緒に居るのだよ!親密な仲を引き裂かないでくれないかい!?」
「教師には『くん』じゃなくて『先生』を付けろ!俺に対する礼儀を持て!」
「つーか私、ナルシなんかと親密じゃないし」
そんなこんなで騒いでいるうちに、チャイムは鳴った。
「ああっ、くそ!ホームルームの時間終わっちまったじゃねぇか!成瀬!」
館林先生は頭をガシガシと掻き、ため息をついた。
「自業自得なのだよ!」
「ちげえだろ!出ていけ!」
先生はナルシを教室の外へと追い出し、ドアをピシャリと閉めた。
きっちりと鍵まで。
グッジョブ、先生。
私は心の中で親指を立てた。
追い出されたと理解したナルシは
悔しかったのか、走り去りながら叫んでいた。
「そのような醜いことをするから三十路前になっても独身なのだよぉー!」
「テメェ成瀬ぇえ!何、人のコンプレックス叫んでやがる!」
先生の叫びは
走り去っていったナルシには届かなかったらしい。
ドンマイ、先生。
心の中で手を合わせた。