冬に降る涙の雨。


学校をあとにして、いつもの道を歩く。

学校から私の住んでいるアパートまでは徒歩で約20分。

普段は何とも思わないこの道のりも、雨が降ると遠く感じる。


そして、アパートが見えた頃には雨が酷くなっていた。


ふと、アパートを見ると人影が見えた。


……誰だろう。
雨宿りでもしてるのだろうか。

そう気にも止めずに私は歩みを進める。



その人は男の人だった。

目の前を通り過ぎようとしたとき、不意に目があった。


傘もささずに立ち尽くすその人は、とても綺麗な目をしていた。


綺麗な目に吸い込まれてしまいそうで、目を離すことが出来なかった。



私は何を考えたのか、見ず知らずの男の人に自分の傘を差し出した。


「……使って」

ぶっきらぼうな言い方しか出来なかったけど、男の人はもう何時間もそこに居たようだったから、風邪を引くんじゃないかと心配になった。





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