冬に降る涙の雨。
やっぱりカナちゃんは優しい。
私なんかより、ずっと。
「嫌いな食べ物とかある?」
突然、カナちゃんが立ち止まり私に尋ねる。
嫌いな食べ物……
「嫌い…って言うか、オムライスは“食べない”かな。」
気づくかな、バレるかな……
そんな、些細な私の一言に、カナちゃんは目を見開く。
「“あれしか食べない”っていう、オムライスがあるんだ……?」
ほらね、やっぱりバレた。
カナちゃんは何者なんだろうね。
「…うん、そ。私はお父さんが作った不器用な、下手くそなオムライスしか食べないの。」
そう。
大好きな、お父さんのオムライス。
ケチャップが少なくて、卵なんかグチャグチャのオムライス。
私はあのオムライスが、大好きだった。