コルニクス
静寂に鳴り続ける波の音に掻き消されない程度に静かな声で。
私は嘘でしょと思って怪我人を見るけれど、
その顔は何かをかたく決心したあとのような神秘的な初めて見る表情で、
私は何も言えなくなってしまった。
「ただ、キュクヌスが大破したんだ。だから誰か迎えに来てくれるとありがたいんだけど」
「なんなら今乗ってくか?」
男性の言葉に胸が締め付けられる。
目まぐるしく変わっていく展開に、待ったをかけたい。
私が一人で焦っていることを知ってか知らずか、怪我人は笑う。
「まだ待ってくれ。テラ・ファミリアの人達に挨拶がしたいんだ。大分世話になったから」
その言葉を聞いて、ほっとする。