コルニクス
西に配達に行ったから、帰りは必然的に東に向かって帰る。
朝日が真っ正面から私達を照りつけ、いきなり目に入ってきた多量の光。
眩しさに目をそばめつつ、北のほうを窺うと、コルニクスが飛んでいた。
きっとさっきの男性だろう。
不意に、あの岩場でクロと別れ、空族の飛行艇に初めて乗り込んだ日の情景が頭に思い浮かんだ。
あの日の空にも確かコルニクスが飛んでいた。
多分、私達を見届けたあとのクロ。
「クロ…」
呟いた私の声は、何故かいつもより五月蝿いエンジンの音に半分掻き消された。
「なにー?」
怪我人が尋ねる。
「エンジンがいつもより五月蝿くて聞こえなーい」
「多少水が入ったんだな」