コルニクス
クリュさんはきっと思い立っただけなんだ。
スパイかもしれないということをたまたま思い立って、
大切な家族のため、疑いたくもない私を疑ったんだ。
私が否定したとき、クリュさんは眉を吊り下げて笑った。
それは安心したような笑いだった。
心のどこかでそんなはずないって思ってくれてたんだ、きっと。
疑いながらも疑いきれずにいたんだ、きっと。
私の良いように解釈しただけだけど、そうならばすべてが当て嵌まる。
「ううっ…ヒック……」
それでも私の思いは言葉にならない。
言葉をかたどりも、なぞりも出来なかった。
自分で分かっているのに。
言葉にして言いたいのに。
声に出して伝えたいのに。