コルニクス
クロは思い出したように訊ねた。
私が頷いたのを確認してからクロがまた口を開く。
「そんなに劣等感抱かなくてもいいんじゃない?」
「土が可哀想です。草花だって生きてr…」
「これは土なんかじゃない」
クロの目つきが変わった。
ヘーゼルとグレーを混ぜたかのような綺麗な虹彩の色は、
太陽の光を直に浴びて、貫くような黄金色に見えた。
「土なんてそんな大層なものじゃない。
人間が空に浮かせるために作った土のようなもの、謂わば人工土だよ」
クロが完璧に管理された花壇を指さす。
「あの花だって、誰が世話をしているわけでもないのに、
オールシーズン枯れやしない。散りもしない。
ただのオブジェだ」