コルニクス
「何個名前あるんだよ」
「さあ…3、4個」
俺は壁にもたれていた背中を離し
ドアに向かって歩きだした。
「じゃあいちばん気に入ってる名前は?」
しばらく部屋に気まずさのない沈黙が続き、俺がのそのそと動きだす音だけが耳につく。
クルシオに"外すわ"と目配せで伝え、ドアノブに手をかける。
「クロ、とか」
……。
………あれ?
クロ?どこかで……
「「クロ!?」」
怪我人とクルシオがハモる。
俺はドアノブに手を置いたまま数秒間フリーズし、
解凍してすぐにドアを開け外に出たときに、
あの腑抜けで鈍臭い根性無しの顔が思い浮かんだ。