コルニクス
だから、ほら。
そう言ってのばされた手は、紛れもなく私を待っていた。
クロの目は優しく笑って横に伸びたために長い睫が影になって、色はヘーゼルに戻っていた。
「一見綺麗な理想都市に見える島だけど、悲しい事実もあるんだよ。
仕方のない犠牲だ。
でもそれは、セルにとっては都合が良い。
此処はセルが存在することに困難が少ない」
クロが飛行艇に片足をかける。
「つまりは、居やすい」
クロの優しくたくましい手が、私の手を握る。
居やすいって…
ずっと居ていいの?
そんな夢のようなことが叶うの?
もしそうだとしたら、私の人生は保証される。
私はクロの手を握りかえし、飛行艇の壁を跨いだ。