コルニクス

「どうしたの?」

「駄目だ」

………何が?

「やめろ。歯向かうな」

「誰が誰にいつ歯向かった?」

私は…少しむきになっていたのかもしれない。

意地をはっていたのかもしれない。

というか、単純に腹を立てていたんだ。

私はクリュさんに苛立って尋ねたけど、答えは返ってこなかった。

クリュさんは分かっていたからだ。

私が分かっていたことを。

"誰が誰にいつ歯向かった?"

私があの男に今さっき歯向かったんだ。

それを私は分かっていた。

分かっていたけど分かっていなかった。

無意識に距離を縮めようとした。

私とあの男の今の物理的な距離を。

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