コルニクス
私があの元帥だという男に歯向かおうとしていたことになど見向きもせず、
私とクリュさんを置いて、事態は進んでいた。
目の前では、怪我人が古い木でできた木目調の床に這いつくばっている。
「なぜ連絡を怠った?」
男が鋭い目を怪我人に向ける。
「申し訳ありません」
静かにそう言って、怪我人は立ち上がろうと両手を床についた。
こきっと右の肘が曲がる。
負傷していることを忘れていたのだろうか、
怪我人はそのままもう一度床に転がってしまった。
「右腕が使えんのか…?」
怖い。酷い。
私の中にはそう思う感情しかうまれてこなかった。