コルニクス

でしゃばって調子に乗りたいわけじゃない。

怪我人を助けたい…!

本能とも言えるような突発的に湧いた力に、私は受動的に突き動かされるだけだった。

……でも、その右足が下ろされることはなかった。

男の足には、怪我人への攻撃を阻止する手があった。

その男のいちばん近くにいた人の手。

宙に浮く止められた足は、怪我人の頭を攻撃することなく、ほぼ強制的に床につけられる。

「どういうつもりだ、大佐」

大佐……。
元帥より低いはずの階級。

息子……。
父親より低いはずの立場。

そんな二重の関係を持って尚、逆らっている。

クロが、元帥である、父親である男に逆らっている。

「妥当じゃない」

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