コルニクス
「は?」
私はただ、息をのむしかなかった。
言葉を発したクロも、聞き返した男も、恐ろしく低い声をしている。
「貴殿の命令通りに任務を遂行し、名誉の負傷を負った部下に役立たずの名目は、妥当じゃないかと」
クロは凄んでいると言っても過言ではないような眼差しを元帥に向ける。
クロは、怒った。
男は、嘲笑した。
ふっと鼻で笑っただけだが、これも同様、確実に凄みを帯びていた。
「殺し屋として役に立ったが、今後役に立ちそうにもない役立たずはもう要らん」
「え…」
驚いた顔をした怪我人の口から7割ほど息でできた声がもれる。
「デンス大尉に退隊命令を下す。どこへでもゆけ」