コルニクス

お世話になりましたと挨拶をしている。

…それは、私の前からいなくなる準備。

視界がぼやけ、滲み、歪む。
自然と私は上を向く。

別に涙がこぼれないようにしているわけじゃない。

空を…見ているだけ。

室内でどうやって空を見るんだって突っ込みをいれたくなるが、
そんな風に説き伏せられたら私はひとたまりもない。

自分をいじめたいわけではないから、そんなことはしない。

…クロが行ってしまう。
2回目の、お別れ。

次はいつ会える?
というか、また会えるの?

「クロ」

声がブレないようにゆっくり出した声は、クロを振り向かせるには充分だった。

「クロは…帰らなきゃいけないの?」

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