コルニクス

つまりは彼の言った通り、縁切り。

出会えた偶然や感じた奇跡。それに伴った運命。

それらがいっぱい連なった絆そのものをなかったことにする。

それが、縁切り。

「セルのためだと思うけど?」

「冗談じゃない…」

「冗談で言ったつもりはないよ」

クロはつかみどころが全くない。

温かいのに急に冷たくなる。
優しさに触れると突き放される。

まさにキャッチアンドリリースだけど、
私の心はいつでもキャッチされたまま。

「切っておかないといずれ後悔することになるよ」

私は下唇をゆっくりと噛みしめ、
目をうんと見開き、
眉間にシワを刻み、
必死で涙をこらえた。

うるうるした視界でぼやけたクロが近づく。

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